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「思い出サルベージアルバム・オンライン」洗浄複写会 レポート

日本社会情報学会(JSIS-BJK)災害情報支援チームが主催する、東日本大震災にて被害に遭った写真やアルバムを洗浄、複写するボランティア活動「思い出サルベージアルバム・オンライン」洗浄複写会に参加。現地の状況や作業内容をご紹介したい。

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今回の東日本大震災による津波で泥水にさらされたのは家だけではありません。思い出が詰まったたくさんの写真も、泥をかぶってしまいました。その写真から心をこめて泥を掃き、洗浄し複写し、誰のものかわからなくなってしまった写真を持ち主の手元に届ける。それを目的としたプロジェクトが「思い出サルベージ」です。
※日本社会情報学会(JSIS-BJK)災害情報支援チームWebページより

洗浄〜複写:全体の過程を一通り体験するボランティア第1日目

TwitterやWebページ、ブログなどでこのプロジェクトを知ったプロのカメラマン、写真関係者、その他有志のボランティアスタッフが、宮城県山元町で行われている写真洗浄複写作業のために参集した。初日は、作業手順や現地での注意事項などの説明を受けた後、一通りの作業を体験すると言う事で、洗浄(泥掃き/水洗い)〜複写までをグループに分かれて行った。

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被害に遭った家などから回収された写真の総数は、実に20万枚以上との事。作業を行う現場の廊下や階段には、処理を待つアルバムや写真が山のように積まれており、容易ならざる状況である事が一見しただけで伝わってくる。また、作業環境や作業内容上、泥などが乾燥して粉塵となったりと人体や精密機器には過酷な状況であった。今回、作業マニュアルなどの書類は、耐久性や可搬性などの都合で、電子化してiPadに入れて持参した。現地では、このような粉塵や雨などから機器を守るために「iPad防水ケース 200-PDA029icon」のような防水ケースなどに入れて使用し、作業者は、粉塵を吸い込まないよう防塵マスクなどを着用しての作業となった。

■第一工程:泥掃き

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最初の行程は、集められたアルバム、写真の中からアルバムの形状を保っている物を選び出し、付着した泥などを取り除く作業。アルバムによっては奇跡的に無傷に近いものから、全てのページに泥や海水、砂などが入り込み、取り除くのが難儀な物、既に腐敗が進んで持っただけでページが抜け落ちてしまう物など様々。アルバムとして体をなしていないものを分類し、それ以外の泥や汚れを落としてゆく作業は、見た目以上の重労働。作業の性質上、屋外での作業となり、汗を流しながら、あれこれ工夫をして泥などをはき落としてゆく。乾燥してこびりついている物や、まだ濡れて強くこすると写真まで痛んでしまう物まで幅広く、決まった手順で効率よく作業するという事ができないのだ。

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■第二工程その1:複写

「泥掃き」されて、「アルバム」として処理する物が、ナンバリングされ、複写する部屋に持ち込まれる。比較的無事なアルバムの多くは、表紙が厚く、フィルムで密閉されるタイプが多い。自ずと大切な写真(赤ちゃんの頃の写真など)が多く貼られており、被害が少ない事が確認できた時は、メンバーから「無事で良かったね・・・」という感想が思わず出る一幕も・・・

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「アルバム」の体をなしている物は、全て複写に回される。中には、分解して洗浄したいと思われるアルバムも含まれるが、一律に複写され、後日のレタッチに回される。個別の対応をしてあげたいと言う意見も出てはくるのだが、一律の対応には理由がある。震災が3月初旬で、今回洗浄・複写を行ったのが6月初旬。3ヶ月経過し、気温も湿度も上昇している中で、現状を維持する事が困難になっている写真、アルバムが増えてきている。一枚でも、一冊でも多くの写真、アルバムを持ち主に届けるために、迅速なデジタル化が最優先なのだ。

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複写は、複写台を使用する方法が最も効率が良いのだが、参加した回では、まだ十分な機材は揃っておらず、三脚に雲台を180度逆に取り付け、垂直下方向を撮影するようにセッティングして、複写を行う方法がとられた。また、現地の電力事情から、照明は使用せず、ISO感度をノイズが出ない最大(1000〜1600)に設定し、カラーバランスはオート、自然光とレフ板を組み合わせての撮影となっている。※後日、複写台の提供があったとの事で、大変嬉しく思います。

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撮影されたデータは、アルバムのナンバーとともにデータ管理の担当へと引き継がれる。大量のデータをハンドリングするので、非常に負荷がかかる作業。例えば、MacBook Pro 17inchに、FireWire800のインタフェース付きメモリリーダなどがあれば、より効率的な作業が実現するのではないか、と思えるくらいの分量を1日中、ほぼ休み無く処理している。

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「失われた思い出を、再び持ち主へ届けたい」

■第二工程その2:洗浄

アルバムが破損して写真がバラバラになってしまったもの、回収された時点で単独の写真、バラの状態で集められたもの、汚損の度合いが酷いものなどが、洗浄に回される。

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洗浄の工程は、少ししか体験しなかったのだが、大まかに大きく泥や汚れを落とすという作業と、それらをさらにキレイな水(ぬるま湯)にて洗浄する作業に分かれる。その際、写真同士がくっついてしまっている場合には、丁寧に剥がしてゆくなどの作業もここで行われる。

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今回、写真の洗浄作業には、富士フィルムの社員の方が、洗浄作業の指導員、アドバイザーとして参加して頂いており、印画紙だけでなく、インクジェットの写真、ダメージに応じた洗浄の仕方などを細かく指導して頂いた。印画紙の色の層は、青(シアン)、黄、赤(マゼンタ)の3層のゼラチン質で構成されており、水に濡れるとふやけてしまい、ゼラチン質なので細菌やバクテリアなどが繁殖(ゼラチン質を食べてしまう)する事で、画像が失われてしまうと言う。実際に、長時間水に浸かっていた写真や、アルバムの神が腐ってしまうほどの悪い状態だった写真の多くは色の層が失われて、台紙の地が出てしまっている物もあった。

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インクジェットの写真は、染料と顔料では対応が異なるとしながらも、基本は染料であるとして対応する事として作業は進められた。インクジェットの場合には、3層になっていないので、色あいはあまり変化しないが、水に濡れてインクが流される、滲むと言うケースが多く見られた。しかし、最近の機種の物と思われる写真は、多少にじんでしまうものの、それなりに判別できる状態だった(こちらも、水に浸かっていた時間や温度、汚れなどの諸条件によって変わるのだろうが)。また、インクジェットのインクや印刷した用紙によっても耐久性が異なり、写真専用紙(しかも高級なものなど)は、より耐久性があるとの事。

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洗浄された写真は、室内に張り巡らせた洗濯ヒモと洗濯バサミにより、乾燥を行う。混ざらないよう、おそらく同じ家族のものだろうという写真にまとめて洗浄〜乾燥まで行い、乾燥したところで、ポケットアルバムに収め、専用の複写作業へと回される。吊るされた写真を見ると、レンズを通して伝わってくる撮影者の想いや、写真の持ち主の思いがヒシヒシと伝わってくるようだ。

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ポケットアルバム専用の複写台。定型のポケットアルバムは、作業効率を考慮して、専用の複写台で複写される。

→ 2日目へ続く
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